不動産は他の商品と大きく異なる点があります。

それは、同一商品という物が無く、個々それぞれオリジナルな商品であるという点です。

戸建はもちろんですが、マンションでも同じマンション内で間取りが一緒であっても、室内の汚れや使用感、窓から望める景色、設備関係の消耗度などにより全然違う評価になります。

つまりこの価格が適正であり間違いないという確実な根拠を求めるのは難しいということです。

では、不動産業者が何を基に査定価格を算出し、売主様に提示しているかというと、

【近隣の販売事例】と【経験に基づいた相場感覚】が重要な要素になっております。

なんだよ相場感覚ってテキトーじゃないか！と憤られた紳士淑女は今しばらくお聞きください。

なぜ販売事例だけでなく、経験に基づいた相場感覚が重要かというと、単純に相場は変化するものだからです。近年のコロナ禍、半導体不足やウッドショック、物価高等、様々な要因遠因が重なり不動産価格にも影響し、上がらないのは仲介手数料だけだと不動産屋同士では夜通し語り合います。

実際多いのは、知り合いだからという理由で相場感の無い遠方の不動産業者に売主様が販売を任せた　場合、ヤケに安いズレた価格で売り出しているということがあります。販売事例のみで判断するとこのような結果になります。遠方の不動産業者の場合、販売事例と同地区で販売中の物件情報のみで査定を致します。この場合販売中の物件がなかった場合、販売事例が一番の根拠になります。そうすると情報がタイムリーではない為に価格にズレが生じてしまうのです。地元の不動産業者の場合、毎日地域の物件情報とにらめっこしている為、近隣エリアの感覚が広く同地区で販売中の物件がなくても、近隣の類似条件のエリアを把握しており、ここでこの値段ならこの価格は通用するという肌感覚の判断ができます。

また土地に関していえば【坪単価】という単語を聞かれたことがある方もいるかと思います。大体1坪の大きさは畳2枚分ぐらいで、1坪当たりの価格を坪単価と言います。この辺は坪なんぼぐらい？と昔から私はこの質問が苦手でした。例えば100坪の大きさの土地の坪単価と20坪の大きさの土地の坪単価は変わり一概には言えないからです。大体坪数が増えれば坪単価は下がり、減れば坪単価は上がるのが普通です。これは坪単価が変わらない場合、総量が増えれば総額が上がり過ぎて買える人いない問題が発生してしまうからです。しかしこれも全ての場所でという訳ではありません。例えば平均坪数が50坪のエリアで、25坪の土地が出たとしましょう。そのエリアでは25坪の土地は人気がないので、図らずも価格を下げなければならず、50坪の土地の坪単価より低くなるというエリアもあります。つまり坪単価をお答えするには条件が付いてくるということです。この坪数なら、更地なら、古家付きなら、整形地なら、道路との高低差がなければ、間口の広さが何メートルなら等、条件にキリがないので坪単価でのお話は難しいと云えます。

販売価格の決め方に話を戻しますが、最終お決めになられるのは売主様です。あくまでも不動産業者は適正だといえる価格を提示するだけで、決定するのは売主様になります。ただ、お恥ずかしいお話ですが、査定価格を盛る不動産業者もおります。価格を盛る理由はもちろん盛った方が売主様にとって魅力的な話に聞こえるからです。不動産業者は売主様と媒介契約を結ぶ為に査定を行いますので、厳しい意見内容は他社よりも不利になる可能性があり、価格が魅力的な査定はそれだけで有利になることもしばしば。しかし最近ではキチンとした情報収集をされる売主様が増え、根拠の薄い高い価格査定をした不動産業者は逆に信用を失うようになってきております。恐らく昔と比べ、不動産を資産として冷静に考えられる売主様が増えたのだと思います。

大切な資産である不動産の価値、それをキチンと買主様に提案できる販売方法を売主様に提示して、信頼を得ることが媒介契約に繋がる条件になってきたのを感じます。販売方法は個別に効果的であると思われる方法を見つけることが重要で、全ての物件を同じやり方で販売するよりも個別に工夫することによって販売価格、販売期間に差が出ると考えます。結局は売主様から頂ける信頼と、それを損なわない不動産業者の弛まない努力が重要なのではないかと思います。